第22回目となるイクサポは、9月26、27日に秋の気配を感じながらの東北となりました。今回は『ふんばろう緑でつながるプロジェクト』さんと『苔玉ワークショップ』を二日にわたり二か所で開催してきました。
初日の目的地に向けて、3月に全線開通した常磐道を北上しました。常磐道を進むと放射線量を表示する線量計が所々に設置されています。線量の高いエリアではオートバイでは走れません。この日の常磐道の最高線量は4.5μシーベルト/h、ちょうど福島第一原発のある地域です。常磐道は避難指示解除地域、帰還困難区域、準備宿泊対象地域、そのほかの避難指示区域を通過しながら北上します。その地域にともなって車窓の風景が変わります。人の生活感がなく緑にあふれた景色、今まさにピンクののぼりが立ち除染が行われている景色、そして除染廃棄物が並ぶ景色と福島の現状を見ることが出来ます。
初日の目的地は宮城県亘理群山元町でした。
最初にお邪魔したのは、山元町にあるお弁当屋、きく邑さん。こちらは震災直後にボランティアさんのために始めたお弁当屋さんだそうです。「ふんばろう緑でつながるプロジェクト」さんがお店の周りに花を植えたご縁で、今回のワークショップが開催されることになりました。
山元町には震災当時の記憶を忘れないために、個人の方が作った写真館があり、訪れることが出来ました。そこにはかつての町の風景、行事などの写真があり、またそのすべてが津波によって流されてしまった事実を目の当たりにすることが出来ます。時が経つと共に風化していく記憶をこの写真館は大切に守っていました。
宮城県亘理群山元町は福島県相馬市と隣接する町です。山元町にある『普門寺』が初日の会場となりました。海岸から500mにある普門寺のご住職、坂野文俊さんも震災の被害にあいながら、震災直後からボランティアの受け入れとして『おてら災害ボランティアセンター』(通称テラセン)を立ち上げ、震災後のお寺と地域の復興のために今も頑張っています。そんな地域の皆さんが集まる『場』にて、一役かうことが出来ました。この日は苔玉ワークショップのほかに、陶土による人形つくりや今も仮設住宅にお住まいの地元の方が弾き語りをしていたりと、多くの人が集まっていました。
そして、いよいよ『苔玉ワークショップ』が始まります。今回は生きた苔を使います。植物はコナラ、ハゼ、ワイヤープランツ、ツルヒメソバを選んでみました。コナラ、ハゼはこれから紅葉し、ヒメツルソバはピンクの花を咲かせます。ワイヤープランツも花が咲き、実がなり、種が出来ます。毎回のことなんですが、皆さん気持ちが先走って、話を聞くか聞かないうちにやり始めてしまうので、「よく聞いてください!」と、念押しします(笑)。今回は17名の方々が参加して頂きました。苔を土に張り付けていくのが難しいところはありましたが、皆さん根気よく素敵な苔玉を作って頂きました。
ワークショップの後に、ご住職の震災後から今に至るまでの気持ちやお寺の再建で様々な方々の協力があったというお話や、復興への思いを聞きました。お話を聞いて、ご住職の板野さんの人柄があっての今のテラセンがあるのだと感じました。
二日目の会場は、サポサポ12の支援先『スマイルかづま学習支援ふんばるんば』の西村しげさんのご自宅です。津波の被害を受けながら、ご自宅を改修し一角を教室につくり直し、地域の子供たちの学習支援の場、地域の皆さんが気兼ねなく集まる場をつくったそうです。また敷地内に駄菓子屋さんも併設して、駄菓子を介して子供たちと日々格闘されているそうです。まさに秋晴れというお天気にも恵まれ、20名の皆さんにご参加していただきました。
ワークショップの開催まで時間があったので、会場の向かいの空き地で、いわゆる雑草といわれる植物(ツユクサ、エノコログサ)を摘んで苔玉にしてみました。その日は除草の日でワークショップの後には刈られていました。こちかも西村さんの人柄によって集まる皆さんがつくる、和気あいあいとした雰囲気で楽しいワークショップとなりました。
ワークショップ後に西村さんの手作りの蒸しパン、おしんこを頂きながら、震災当時の話から地域の子供たちへの思いを聞かせていただきました。
今回、サポサポの支援先に足を運ぶことが出来て皆さんにお会いできて、これからも支援を続けていけたらと思う訪問となりました。
ワークショップを終え、日和山公園に行きました。個人的には何度か訪れている石巻ですが、日和山公園は初めて来ました。高台から見た景色は、震災のあの日を想像しがたいほど、とても穏やかで美しい光景が広がっていました。
旅の最後に名取市閖上地区を訪れました。
閖上地区は震災当時4000名ほどの方々がいて、そのうち800名もの方々が犠牲になったそうです。現在も現地で再建か内陸移転かで今も揺れ動いているそうです。神社のある高台からは空き地の続く光景が広がり、ぽつんと一つの建物と空に向かって立つ慰霊碑が、津波の爪あとを物語っていました。それでも現在、閖上の一角に「ゆりあげ港朝市」が開かれ、日曜・祝日の朝には数千人の人たちが集まってくるそうです。
今回は秋晴れに恵まれた東北の旅になりました。ワークショップの会場で地域の中心となって復興に向かう板野文俊さん、西村しげさんにお会いすることができました。そして37名の方々にもお会いできて、楽しいワークショップが開催できたと思います。ありがとうございました。皆さんに作って頂いた苔玉が、日々の暮らしの潤いになりますように。
(サポサポスタッフ m.k)